書籍より 01

骨を「動きの目印」にして、隣の部位と一緒に動くかを見る

上腕と前腕のような隣り合う部位の動きを、骨を目印にして見る方法を書いています。動かしたつもりの感覚と、鏡や動画に見えた動きを分けて残すやり方も紹介します。

「肘のあたりが硬い」と感じても、それだけでは次に何を確かめればよいかが決まりません。肘そのものが動きにくいのか、肩と一緒に動いてしまうのか、動かす順番の問題なのかで、見る場所が変わります。

『骨格ねじれ研究ノート』では、隣り合う部位がどう動くかを見るときの目印に骨を使っています。この記事は、その第2章をもとにしています。

「硬い」という感想を、観察の言葉に置き換える

腕を例にします。上腕と前腕は、肘の関節でつながっています。前腕が上腕に対して動くと、二つの区間の位置関係が変わります。本の中では、こうした身体の区間を「分節」と呼んでいます。

ここで言う「骨が動く」は、関節をはさんで区間どうしが動くことです。骨そのものを曲げたり、外から押して位置を戻したりすることは指していません。

最初の感想観察の言葉に置き換えると
肘のあたりが硬い上腕に対して、前腕はどのように動いているか
肩がついてこない前腕から上腕、肩へと、いつ動きが移っているか
何となく一塊に感じる一緒に動く区間と、違う動きができる区間はどこか

こう言い換えても、身体の問題を診断できるわけではありません。何を見ればよいかがはっきりするので、昨日の感想と今日の感想を、同じ場所を見て比べられます。

私が骨を目印にしている理由

私には、どの筋肉がどう働いたかを感覚だけで追うのが難しく感じられました。手首や肩の輪郭を見ると、「ここまでは一緒に動いた」「ここから違う動きになった」という境目を見分けやすくなります。それで骨を目印にしています。ただ、骨に注意を向けるほうが、筋肉や動作の結果に注意を向けるより優れていると確かめられたわけではありません。

目印には、外から見える輪郭や区間の境目を使います。深いところの骨を触って探したり、位置を判定したりするためには使いません。左右差を見つけても、それだけで異常や痛みの原因とは考えません。

たとえば腕のウェーブで、肘で波が止まったように感じても、映像で見ると肘は動いていて、肩へ受け渡すところで途切れて見える、ということも考えられます(説明のための例です)。そうであれば、「肘が硬い」という最初の見立ては、観察に合わせて変えてかまいません。

「動かしたつもり」と、見えた動きを分けて残す

身体の位置や動きの感覚は、いくつもの感覚の入力と脳の働きで組み立てられています。固有感覚を整理した研究レビューでも、位置や動きの情報を一つの受容器だけの働きとしては扱っていません[1]。自分の内側の感覚は参考になりますが、骨の実際の位置をそのまま示してくれるわけではありません。

そこで私は、感じたことと鏡に見えたことを分けて残し、照らし合わせています。

分けて残すもの記録の例(説明用)
自分が感じたこと肩だけを動かしたつもりだった
鏡や映像で見えたこと肘も同じタイミングで動いていた
次に確かめたいこと動きを小さくしたときも、一緒に動くか

鏡や動画も、映す向きや撮る向きによって見え方が変わります。感じたことと見えたことの違いを残しておくと、感覚だけで「骨が戻った」と決めつけずにすみます。

参照

参考URLと参照範囲

  1. Proske & Gandevia(2012)The proprioceptive senses位置・動き・力の感覚を複数の入力から捉える研究レビュー。本書の観察法の優位性や治療効果の根拠としては使いません。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23073629/

個別研究やガイドラインは、本記事の観察法や独自理論を証明するものではありません。本文で明示した対象・条件・限界の範囲で参照しています。

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