調べる 01

まっすぐ立った写真で、よい姿勢かどうかはどこまで分かるか

横から撮った立ち姿の写真に線を引くと分かることと、写真一枚では決められないことを分けました。姿勢と痛みの関係を調べた研究と、呼吸や歩く動作の中で姿勢を見る方法も書いています。

A:静止写真の補助線。B:同じ人にも見られる自然な変動。C:動作中に変わる頭・胸郭・骨盤・足の関係。図は正常・異常や原因を判定するものではありません。

写真に一本の線を引いてみる

横から撮った写真に線を引いて、耳、肩、腰、膝、くるぶしの位置を見ると、撮ったときの身体の輪郭を整理しやすくなります。

全身の軸骨格と付属肢骨格の位置

ただ、一本の線からは、撮った瞬間の平面上の位置関係しか分かりません。呼吸、視線、どちらの脚に体重を乗せているか、カメラの高さ、レンズ、服の厚み、足の置き方でも見え方は変わります。頭が前に出た姿勢(頭部前方位)をX線を使わずに測る方法についても、方法ごとにどれだけ安定して、どれだけ正確に測れるかを調べたレビューがあります[1]。

写真の線は、映画でいえば一場面を整理するための補助線です。その線から、映画全体の筋までは分かりません。

写真で記録できること、決められないこと

写真からは、肩の高さ、頭の傾き、膝や足の向きなどを記録できます。同じ条件で撮れば、同じ人の変化を時間を追って比べる資料にもなります。

一方で、見た目の違いが、骨や筋肉、軟部組織から来ているのか、服や撮る角度、動作のどの瞬間を撮ったかによるのかは、一枚の写真では決められません。身体の中の立体的な位置や、左右差ができた経緯も、平面の輪郭には写りません。

写真から記録できること写真だけでは判断できないこと
肩・骨盤・膝・足部の見かけ上の関係椎骨や関節面の正確な三次元位置
同じ撮影条件における前後差左右差が生まれた原因
歩行を撮った一場面の足の配置痛みの原因や将来の症状
頭や体幹の代理角度個別の運動や医療上の判断

「右肩が高く見える」までは写真から言えますが、「背骨のずれが原因だ」と言うと、原因の推定になります。この二つは分けて考えます。

姿勢と痛みの関係

いくつものレビューをまとめた2019年のアンブレラレビューでは、姿勢や身体への負担と腰痛の因果関係について、レビューどうしで結論がそろっていませんでした[2]。頭や首の姿勢と首の痛みについても、何で測るか、年齢、性別などによって結果が違っています[3]。こうした研究を見る限り、一つの姿勢だけを取り出して痛みの原因と決めることはできません。

痛みを考えるときは、写真に写った姿勢のほかに、同じ姿勢を続けた時間、仕事の内容や生活の環境、活動量と睡眠、心理社会的な要因、動いたときの感覚や日常の動きやすさも合わせて考えに入れます。

止まった姿勢に、動きを足して見る

止まった姿勢を映画の一場面と考えるなら、その前後の動きも見ておきます。次のように条件を変えて、その違いを書き留めます。身体に点数をつけるための検査ではありません。

  • 呼吸で胸郭と骨盤の見え方がどう変わるか
  • 胸を左右へ向けたとき、軌道や本人の感覚に差があるか
  • 腕を上げたとき、上腕と肩甲帯の関係がどう変わるか
  • 左右の脚へ荷重したとき、骨盤・膝・足部がどう変わるか
  • 数歩の中で、腕、胸郭、骨盤、足の配置がどう変わるか

歩く速さと、胸郭と骨盤の動きの協調を調べた研究は、健康な男性9名を対象にしたものです[4]。別の研究は、特発性側弯症のある思春期女性39名と対照30名を比べています[5]。肩甲骨の動きを扱ったレビューでは、人による違いや研究による違いが取り上げられています[6]。どれも対象が限られているので、一般の人全体や、この記事の簡単な観察にそのまま当てはめることはできません。

写真と同じように、鏡や動画も答えではなく手がかりとして使う考え方を、『骨格ねじれ研究ノート』第6章に書いています。

「よい姿勢」をどう扱うか

よい姿勢を、一つの完成した形としては決めていません。止まった形に加えて、課題を変えたときの動きも見るやり方は、このプロジェクトで使っている作業仮説で、医学的な正常値にもとづくものではありません。

この作業仮説で扱うことこの作業仮説だけでは扱えないこと
同じ人の静止時と動作時を比べる痛みや病気の診断
条件を明示して変化を記録する骨の正確な三次元位置
形・感覚・日常機能を分けて書く特定の運動が必要かという医療判断
観察できなかった項目を未確認とする独自理論の有効性の証明

WHOのガイドラインは、成人の慢性一次性腰痛に、いろいろな面から一人ひとりに合わせて対応するための資料です[7]。姿勢の観察方法が妥当かどうかを確かめた資料ではありません。姿勢と痛みの因果関係の根拠にも使っていません。

参照

参考URLと参照範囲

  1. 非放射線による頭部前方位測定の信頼性・妥当性レビュー(2022)測定方法の信頼性と妥当性https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9354067/
  2. 姿勢・身体的曝露と腰痛因果のアンブレラレビュー(2019)既存レビュー間の合意https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31451200/
  3. 頭頸部姿勢と頸部痛の系統的レビュー・メタ解析(2023)頭頸部姿勢と頸部痛https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36825268/
  4. 健康な男性9名の歩行速度と胸郭―骨盤協調(2007)限定された対象における歩行協調https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17669652/
  5. 側弯症のある思春期女性39名と対照30名の胸郭―骨盤協調(2016)限定された2群の比較https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25893334/
  6. 肩甲骨運動の変動に関する系統的レビュー・メタ回帰(2025)肩甲骨運動の変動https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40845626/
  7. WHO慢性一次性腰痛ガイドライン(2023)成人慢性一次性腰痛への多面的対応。姿勢観察法の検証ではありませんhttps://www.who.int/publications/i/item/9789240081789

個別研究やガイドラインは、本記事の観察法や独自理論を証明するものではありません。本文で明示した対象・条件・限界の範囲で参照しています。

このサイトの記事は、ミトン先生の体験と研究所の考えを記録したものです。方針の全文はサイトの方針をご覧ください。