調べる 02

骨格を、関節をはさんだ骨どうしの動きから見る

ダンスのアイソレーションで、胸を動かそうとすると肩や骨盤まで一緒に動く感じがありました。その感じを、隣り合う骨どうしの動きとして、条件ごとに記録する見方を書いています。研究で分かっていることと、まだ仮説の段階のことは分けてあります。

A〜C:腕を上げる過程で、胸郭を基準に鎖骨・肩甲骨・上腕骨の相対関係が変わる様子を強調した模式図です。角度、正常値、個人の骨の正確な位置を示すものではありません。

隣り合う骨どうしの動きを見る

「骨が一個ずつ動いていない」という言い方を、骨どうしの隙間がないとか、くっついている(癒着している)という意味に取らなくてかまいません。隣り合う骨が関節をはさんで、お互いの角度、向き、速さ、順番を変えながら動く、その動き方のほうを見ます。

全身の軸骨格と付属肢骨格の位置
観察の軸記録するもの単独では判断できないこと
静的な位置立位や座位での骨格指標の配置その位置が唯一の正解か
相対的な角度隣接する部位の角度変化角度が大きいほどよいか
速度と順序どの部位が、いつ、どの速さで動くか特定の順序が全員に最適か
動作条件方向、速さ、負荷、支持面、課題一条件の結果を日常全体へ一般化できるか

「一個ずつ動かない感じ」を、確かめられる言葉にする

私自身、ダンスのアイソレーションで、胸を動かそうとすると肩や骨盤まで一緒に動いたり、首を動かそうとすると胸郭まで向きが変わったりする感じがありました。骨どうしの動きを見るという考え方は、この体験から出てきました。ただ、この感じが骨の癒着を示しているわけではありません。

ここからは仮説です。この感じは、動かそうとした部位の動きが、まわりの部位へどう分かれていったかとして観察できると考えています。まわりが一緒に動いていても、その課題に必要な協調なのかもしれません。そのため、ついてくる部位や動きの幅を記録しても、それだけで悪い動きとは判定しません。

「動きの選択肢を増やすと、身体の働きに役立つ」という考えも、まだ確かめられていない仮説です。条件を変えたときに動きの配分が変わるか、その変化が別の課題でも同じように出るかを調べます。変化の大きさだけで良し悪しは決めません。

腕を上げるときに関わる骨

腕を上げる動作には、上腕骨、肩甲骨、鎖骨、胸郭などが関わります。肩甲骨だけを見ても、腕全体の運動は説明しきれません。

上腕骨頭・肩甲骨関節窩・鎖骨の位置

20研究を含む2025年のシステマティックレビューでは、腕を上げるときの肩甲骨の動きには大きなばらつきがあり、決まった角度から動き始める、いつも同じ比率で動く、という見方は支持されませんでした。痛みのある人とない人で、安静にしているときに違いがあるか、といった点の確実性は「非常に低い」と評価されています[1]。

腕の角度、速さ、負荷によって、それぞれの部位がどれだけ動くかは変わると私は見ています。肩甲骨の動きが大きいか小さいかだけでは、異常とは言えません。そのため、一つの代表値を決めずに、条件ごとの動きの配分を記録します。

条件ごとの動きの配分を記録する

記録項目質問の例解釈上の注意
課題腕を上げる、体幹を回す、歩く課題が違えば配分も変わる
相対角度・方向胸郭に対して骨盤はどちらへ向くか大小だけで良否を決めない
速度・順序どの部位が先に変化するか順序の違いを異常としない
伴う運動頭部や肩甲帯がどの程度動くか追従は必要な協調の場合がある
再現性同じ条件で似た配分が現れるか変動が大きいほどよいとは限らない

同じ人が条件に合わせて動きの配分を変えられるかどうかは、まだ仮説の段階で、これから調べていきます。たくさん動けることや、細かく分けて動かせることを目標の数値にはせず、その人の課題や日常の動きとの関係は別に確かめます。写真や3Dモデルに出る角度も、観察のための目安で、診断の結果ではありません。

固有感覚の研究との関係

固有感覚は、身体の位置、動き、力についての感覚として整理されています[2]。固有感覚の訓練については、2023年のレビューが成人を対象にした106研究をまとめていますが、遅延追跡を行ったのは12研究(訓練が終わってしばらくたってから測り直した研究)で、訓練の方法、対象、測り方もばらばらでした[3]。2022年のレビューも、健常者と臨床集団を含む70研究から改善の例をまとめる一方で、方法がそろっていないことと、効果が長く続くかどうかの根拠が足りないことを指摘しています[4]。

これらの研究で調べられた訓練は、このプロジェクトで考えている「骨を一個ずつ動かす練習」と同じものではありません。固有感覚に働きかけると動きの配分が変わるのか、その変化が日常の動作にまで広がるのかは、まだ確かめられていません。

感覚が鋭いことと骨格の位置を同じものとしては扱いません。研究で出た平均的な効果を、一人ひとりへの効果の保証にも使いません。このプロジェクト独自の方法は、既存の研究とは分けて確かめていきます。

「硬い」と感じたとき

「硬い感じ」には、関節の動く範囲、筋肉の張り、身体を守ろうとする反応、痛み、感覚の受け取り方など、いくつもの要素が入っている可能性があります。自分の感覚や写真だけで、どの組織が原因かを判断することはできません。外から強い力をかけて骨を動かすことが必要かどうか、安全かどうかも、この記事の内容からは言えません。

「硬い」を一つの言葉で片づけずに分けて見る話は、『骨格ねじれ研究ノート』第1章から通して読めます。

参照

参考URLと参照範囲

  1. 肩甲骨運動の変動に関する20研究のシステマティックレビュー・メタ回帰(2025)肩甲骨運動の変動とエビデンスの確実性https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40845626/
  2. 固有感覚のレビュー(2012)位置・動き・力に関する感覚https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23073629/
  3. 固有感覚トレーニング106研究のシステマティックレビュー(2023)異質性と遅延追跡12研究https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37864458/
  4. 健康・臨床集団70研究の固有感覚トレーニングレビュー(2022)多様な対象、方法の異質性、長期保持https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36188962/

個別研究やガイドラインは、本記事の観察法や独自理論を証明するものではありません。本文で明示した対象・条件・限界の範囲で参照しています。

このサイトの記事は、ミトン先生の体験と研究所の考えを記録したものです。方針の全文はサイトの方針をご覧ください。