従来法との差 01

なぜ、ストレッチを続けても身体が柔らかくならないのか

ストレッチを続けても身体が変わらなかった私が、固まっている背骨や胸郭、肩甲骨、骨盤を先に小さく分けて動かし、そのあとで伸ばす順番に変えた話です。鏡の前で今日から試せる手順も書いています。

日本で育った私は、「ストレッチ」と聞くと、前屈をしたり、脚を開いたり、肩や背中を強く引っ張ったりする運動を思い浮かべていました。身体が硬いなら、筋を伸ばせばいいと思っていたのです。

下の図は、身体の背面の浅いところにある筋肉と、骨格の位置です。

背面の浅層筋と骨格の位置(図: Z-Anatomyを基に作成)

けれど、身体がかなり固まっていた私の場合、ストレッチを続けても、本当に変えたかった場所はなかなか動くようになりませんでした。

伸びている感じはありましたし、その場では少し柔らかくなった気もしました。それでも、首や背中の動かしにくさ、身体の左右差、動作の引っかかりは残りました。

そこで、筋をどれだけ長く伸ばせるかのほかにも、原因があるのではないかと考えるようになりました。身体が強く固まっている人は、筋を伸ばす前に、背骨、胸郭、肩甲骨、骨盤がそれぞれ動ける状態になっているかを、まず確かめたほうがいいと思います。

下の図は背骨です。背骨は、首の頸椎、胸の胸椎、腰の腰椎、骨盤の中央にある仙骨と、いくつもの区間が積み重なってできています。

頸椎・胸椎・腰椎・仙骨の位置

次の図では、筋を引っ張るだけのストレッチと、骨格を分けて動かす練習を並べています。

筋を引っ張るストレッチと、骨格を分けて動かす実践の違い

伸びている場所と、動いてほしい場所は同じとは限らない

前屈をして、太ももの裏に強い伸びを感じたとします。「よく効いている」と思っても、背骨が動いているとは限りません。

背骨の一部が固まっていると、動きやすい腰や股関節だけが大きく曲がりやすくなります。肩甲骨が胸郭の上を滑りにくいと、腕や肩の別の場所が代わりに引っ張られますし、骨盤が動かないと、膝を伸ばす筋の張りばかりが強くなります。

固まった場所は動かない
        ↓
動きやすい場所が代わりに動く
        ↓
そこだけが強く引っ張られる
        ↓
「効いている」と感じる
        ↓
しかし、固まった場所は残る

「骨格が固まる」という言葉の意味

骨格ねじれ研究所で「骨格が固まる」と言う時は、背骨、肋骨、肩甲骨、骨盤などが細かく分かれて動かず、まわりの筋肉や組織、長年の動かし方の癖と一緒に、一つの塊のように動いている状態を指しています。骨の材質が硬くなるという意味では使っていません。

本当ならいくつもの場所に分かれるはずの動きを、一部の関節だけで引き受けている状態です。私の身体は、長いあいだそうなっていたのだと考えています。その状態で筋だけを引っ張っても、動いてほしい区間は動かないままなので、身体全体の柔らかさにはつながりにくいと思います。

ダンスで「分けて動かす」ことを知った

きっかけはダンスでした。アイソレーションでは、首、胸、肩、骨盤などを、できるだけほかの部分と分けて動かします。ウェーブでは、その小さな動きを順番につないでいきます。

完成した踊りをまねするだけなら、得意な場所を使って形を作ることもできます。けれど鏡の前で一部分ずつ動かそうとすると、動かない場所がはっきり見えました。それを見て、私の身体は柔軟性が足りないというより、部分ごとに動かせていなかったのだと思いました。

ストレッチの前に、分けて動かす

身体が強く固まっている場合も、ストレッチをやめる必要はありません。私は、取り組む順番を次のように変えました。

  • 骨格模型や図解で、その場所の骨の形と関節を知る
  • 大きな鏡で、自分の動きと左右差を見る
  • 動かない区間を小さく分けて動かす
  • 新しく動き始めた範囲で、ゆっくり伸ばす
  • その可動を、歩行やダンスなど全身の動きへ戻す

この順番だと、ストレッチでは新しく動くようになった範囲を伸ばすので、動かない場所を無理に引っ張ることはありません。伸ばして広がった範囲を、そのあと全身の動きの中で使っていきます。

図では、この流れを、骨を知る、分けて動かす、伸ばす、全身へ戻す、の4段階にまとめています。

骨を知る、分けて動かす、伸ばす、全身へ戻す

『私が、自分の骨格のねじれを修正した方法』(PDF)では、この記事を第3章に入れ、首のアイソレーション(第2章)の次に読む順番にしています。

柔らかさを前屈や開脚以外でも見る

前屈で床に手が届くか、開脚が何度できるかでも柔軟性は分かりますが、研究所では次のような変化も柔らかさの一部として見ています。

  • 首を左右へ同じように動かせるか
  • 胸郭を骨盤とは別に回せるか
  • 肩甲骨を上げ下げし、前後へ動かせるか
  • 背骨の一部分だけを曲げられるか
  • 骨盤を前後へ動かし、その上に背骨を積めるか
  • 新しく得た可動を、歩行や日常動作で使えるか

私は、整体やストレッチだけでは分からなかった左右差を、鏡の前でこの項目を一つずつ確かめながら見つけていきました。

大きく曲がらなくても、固まっていた場所が少しでも動きに加わっていれば、身体全体が柔らかくなっていく途中の変化として見ます。

ストレッチで変わらなかった理由

ストレッチを続けても身体が変わらないと、努力が足りないのだと思いがちです。私の場合は、同じ方法を強く繰り返しても変わらない理由がありました。動かしたい骨格が一つの塊になったまま、そのまわりの筋だけを伸ばしていたのです。

筋を伸ばすこと自体は間違っていませんが、伸ばすだけでは届かない段階があると思っています。順番を変えてから、私にとってストレッチは、身体全体を変えるための練習の一部になりました。

今日試すなら、次の三つで十分です。

  • いつものストレッチをする前に、鏡で首・胸郭・骨盤の左右差を見る。
  • 一番動きにくい場所を一つだけ選び、小さく分けて動かす。
  • 動きが変わってから、いつも通り伸ばす。

「分けて動かす」力をどこから作るかは、次の記事「外から押されるだけでは、身体は変わらなかった」に書いています。

参照

参考URLと参照範囲

  1. NHS: Flexibility exercises記事の参考資料https://www.nhs.uk/live-well/exercise/flexibility-exercises/
  2. DanceZoneKo(ダンサー裕美)YouTubeチャンネル記事の参考資料https://www.youtube.com/@dancezoneko
  3. ダンス・身体操作の動画を集めたYouTubeプレイリスト記事の参考資料https://www.youtube.com/playlist?list=PLpgteAKgNvytqRbRfaQLAM-hE4aJy4tI3

個別研究やガイドラインは、本記事の観察法や独自理論を証明するものではありません。本文で明示した対象・条件・限界の範囲で参照しています。

このサイトの記事は、ミトン先生の体験と研究所の考えを記録したものです。方針の全文はサイトの方針をご覧ください。