見抜く・観察 03

O脚は、膝だけ押しても変わらなかった

O脚のとき、骨盤、股関節、太ももの骨、すね、足裏の向きを上から順に確かめる方法を、私の経験と研究の報告をもとに書いています。

私は、離れた膝を手で内側へ押したことがあります。かなり力をかけても、ほとんど動きませんでした。手を離すと元の位置へ戻りました。何度やっても同じでした。

O脚を直そうとすると、まず膝を見る人が多いと思います。膝を内側へ寄せたり、膝の外側を伸ばしたり、内側の筋肉を鍛えたりします。離れて見えるのが膝なので、膝を動かしたくなるのは自然なことで、私もそこから始めました。

そもそも膝は、太ももの骨(大腿骨)、膝のお皿(膝蓋骨)、すねの太い骨(脛骨)と、その外側に添う細い骨(腓骨)でできています。下の図のとおり、膝は太ももの骨とすねの骨が突き合わさっている場所で、膝という独立した部品があるわけではありません。

大腿骨・膝蓋骨・脛骨・腓骨の位置

膝を押しても動かなかったのは、膝が一本の脚の途中にある関節だからだと私は考えています。膝の上には骨盤と、脚の付け根の関節(股関節)があります。下には足首と足裏があります。上と下の向きがそのままなら、途中の膝だけを押しても脚全体の軸は変わりません。

上の端は骨盤です。下の図で、骨盤の左右の下側に、太ももの骨がはまる受け皿が一つずつあるのを確かめてください。太ももの骨はここから下へ伸びています。

骨盤と左右股関節の位置

下の端は足です。足首の下で踵が床に着き、その前に足の骨がアーチを作って並んでいます。すねの骨はこの上に立っています。

足首・踵・足部の骨の位置

次の図は、上の端と下の端を含めて、脚を一本まるごと描いたものです。左は膝だけを内側へ押す場合、右は骨盤から足までの並びをまとめて組み替える場合です。脚の付け根の中心から足首の中心へ引いた線に対して、膝がどこにあるかを比べてみてください。

膝は、脚の途中にある

O脚の見方と、膝のほかに確かめる場所

医学でいう内反膝、いわゆるO脚は、膝が外側へ弓なりに見える脚の並びのことです。整形外科の評価では、股関節の中心、膝、足首の中心を通る脚の軸が使われます。

骨格ねじれ研究所では、膝の間隔のほかに、次の場所も見ます。

見る場所確認する関係
骨盤前後位置、傾き、左右の高さと回旋
股関節骨盤に対する大腿骨の向きと回旋
膝大腿骨と脛骨の角度、曲がり、左右差
下腿脛骨の向きとねじれ
足部踵、足先、アーチ、接地する場所
全身どこへ重心を預けて立っているか

膝が大事なのは確かです。ただ、膝は股関節から下りてくる太ももの骨と、足へ続くすねの骨の間にあります。膝だけを取り出して見ると、なぜ膝が今の位置にあるのかが分からなくなります。そのため、O脚を見るときは骨盤から足裏までを続けて見ています。

膝だけに力をかけても動かなかったわけ

膝を内側へ寄せる力を強くしても、骨盤が前へ出たままなら、太ももの骨は同じ角度で膝へ下りてきます。足先と踵の向きが変わらなければ、すねの骨も同じ方向から膝を支えます。

骨盤の位置と向き
        ↓
股関節に対する大腿骨の向き
        ↓
膝での大腿骨と脛骨の関係
        ↓
足首・踵・足裏の接地

この上下の関係が残ったまま膝だけを押すと、膝には横向きの力がかかりますが、全身で体重を支えている道筋は変わりません。私が押した膝が元に戻ったのも、上と下が元の軸のままだったからだと思います。

骨そのものが弓なりになっている構造的なO脚と、立ち方や回旋(骨や関節がねじれる方向へ向くこと)でO脚のように見えている状態は、別のものです。成人で骨の形そのものが変形している場合、運動や外から押す力で骨の形を変えることはできません。

この記事では後のほう、骨盤、太ももの骨、すね、足の使い方や体重の乗せ方で変わる余地がある部分を扱います。

足裏のアーチとO脚の関係

足裏のアーチも関係します。足は床と身体が接する場所で、踵がどちらへ傾くか、足先がどちらを向くか、親指側と小指側のどちらに体重が乗るかで、すねの向きが変わります。

参考資料に挙げた研究では、足裏が内側へ倒れ込む動き(回内)が大きくなると、すねや太ももの骨が内側へねじれる動きや、骨盤の傾きと連動する場合があると報告されています。立った姿勢で撮る画像でも、足の向きが違うだけで脚の内反・外反の測定値が変わります。足首と足の並び方によって、股関節や体幹を鍛えたときの動き方が変わるという報告もあります。一方で、O脚に見える人の足裏がいつも扁平で、アーチが崩れているとは限りません。

足裏は身体の土台ですが、土台を直せば上の骨が自然に並ぶというわけでもありません。骨盤から足までの関係を、上からも下からも確かめる必要があります。

骨盤が前に出ていないかを見る

私の場合、骨盤が身体の前のほうへ出た位置を普通だと思っていました。骨盤は前や後ろに傾くほかに、全体が前へ移動したり、左右どちらかへ寄ったり、回旋したりもします。

骨盤が前へ出たまま後ろに傾くと、脚は本来より前のほうから床へ下りているように見えます。そこでバランスを取ろうとして、股関節、太ももの骨、膝、足先の向きが次々に変わっていく、と私は考えています。

下の図では、横から見た骨盤の前への移動と、正面から見た太ももの骨・膝・足の向きのずれを並べています。骨盤の角度より、前後の位置が違うところを見てください。

骨盤の位置からO脚を見る

骨盤の傾きと太ももの骨の回旋が連動することは、運動学の研究で報告されています。ただし、すべてのO脚が同じ骨盤の位置から起きるわけではありません。

研究所では、膝が離れているから膝を寄せる、という考え方からは始めません。先に、膝より上にある骨盤がどこにあり、そこから太ももの骨がどちらへ下りているかを見ます。

脚の付け根(股関節)が横へ張り出していないか

骨盤の次は、骨盤と太ももの骨のつなぎ目、股関節です。

太ももの骨の上の端には丸い頭(大腿骨頭)があり、骨盤側の受け皿(寛骨臼)にはまっています。この形なので、太ももの骨は前後、左右、ねじる方向へ動けます。骨盤と太ももの骨は別々の骨ですが、立っているときはお互いの向きが連動します。

研究所では感覚をそのまま言葉にした言い方をよく使うので、解剖学の上での意味と並べておきます。

研究所で使う言い方解剖学の上での意味
股関節が横へ広がっている大腿骨の上のほうが外側へ張り出すように見え、骨盤の下で体重を受けにくい感覚
大腿骨を後ろへ回り込ませる大腿骨頭を後ろへ押し込む手技のことではない。股関節の回旋と伸展を使って、骨盤の後ろ側でも体重を受けられるようにするイメージ
脚を骨盤の下へ収める膝を無理に内側へ寄せず、骨盤・大腿骨・足部の向きを組み直して、脚全体で立つ

私は、脚の付け根を横へ張り出したまま膝だけを内側へ押さないことが大事だと感じました。太ももの骨が骨盤の下で回り、股関節の後ろ側まで使えるようになると、膝を横から押さなくても脚の下り方が変わってきました。

これは、股関節の中で骨が動く感覚をつかんで、骨盤と太ももの骨の向きを選び直すという、研究所での身体の捉え方です。

下の図は、左が膝だけを寄せようとしている状態、右が股関節の後ろ側まで体重を受けているイメージです。骨の丸い頭は受け皿から外へ出ていません。受け皿の中で向きが変わっているところを見てください。

「大腿骨が後ろへ回り込む」という身体像

O脚を観察する順番

研究所では、膝を寄せる前に、次の順番で全身を見ます。

  • 全身を正面・横・後ろから見る。膝の間隔と合わせて、骨盤の前後の位置、肩、足先、踵も確かめる。
  • 骨盤がどこにあるかを見る。前傾・後傾とは別に、前後への移動、左右への移動、回旋も分けて見る。
  • 股関節で太ももの骨が回るかを見る。膝や足先を無理に固定せず、左右で回り方に差がないかを確かめる。
  • 膝の曲がる方向を見る。膝頭と足先の向きが大きく食い違っていないかを見る。
  • 踵と足裏の三点を確かめる。踵、親指の付け根、小指の付け根に、どう体重が乗っているかを見る。
  • 立った姿勢から歩く動作へ戻す。形を作って終わりにせず、一歩目で元の向きに戻らないかを見る。

この順番で見るのは、膝がなぜ今の位置にあるのかを探すためで、誰にでも同じ形を作らせる手順とは違います。

痛み、腫れ、片側だけの強い変形、だんだん進む変形、歩きにくさがある場合は、自分で力を加え続けるのはやめて、専門家の評価を優先してください。骨の変形や病気があるかどうかは、立った姿勢で脚全体を撮るX線検査などを含めて、整形外科で調べる領域です。

脚全体の並びを見る

O脚を膝だけで直そうとすると、膝を理想の位置へ押し込みたくなります。けれども、私が見たいのは膝の間隔より、骨盤の下から太ももの骨がどちらへ下りているか、太ももの骨とすねの骨が膝でどうつながっているか、踵と足裏が床から受けた力をどちらへ返しているかのほうです。そのうえで、その並びのまま歩けるかを確かめます。

膝は、骨盤と床の間の中継点です。上から入ってくる力と、下から返ってくる力の向きが変われば、膝の位置や動きも変わることがあります。研究所では、離れた膝を手で閉じようとはせず、骨盤から足裏まで、脚全体で体重を受けられる立ち方を増やしていくことを目指しています。

骨の形によるO脚と、使い方で変わる部分を分けて考える

ここは混同しやすいので、表にしておきます。

状態運動で期待できること運動だけではできないこと
骨盤・股関節・足部の使い方による見え方立ち方、荷重、可動性、膝と足先の方向関係を学び直す変化量を事前に保証する
筋力や運動制御の左右差動作の選択肢と安定性を増やす一つの運動ですべての原因を除く
成人の固定した骨変形周辺の筋力、動作、負担の管理を支える運動や手で押す力によって骨の形を真っすぐに作り替える
痛みや進行性の変形専門評価の後に適切な運動を選ぶ写真や自己感覚だけで原因を確定する

身体の使い方で変わる部分があることと、骨の形そのものを運動で変えられることは、別の話です。この二つを一緒にしてしまうと、必要以上の力で膝を押し続けることになりかねません。研究所では、動かせる部分を見つけて、骨盤・股関節・膝・足の関係を組み直すことに取り組んでいます。

鏡の前で試せること

鏡の前で試すなら、膝以外のところを見てください。

  • 全身を正面・横・後ろから映し、膝の間隔より先に、骨盤の前後の位置を確かめる。
  • 膝頭と足先の向きが大きく食い違っていないかを見る。
  • 手で膝を押さずにそのまま一歩歩き、脚の向きが元へ戻るかを見る。

O脚が気になって整体に通った2年半のことは、『O脚を直したくて始めた姿勢矯正系整体通院日記』に日付ごとに書いています。

参照

参考URLと参照範囲

  1. 日本整形外科学会「O脚・X脚」記事の参考資料https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/bowleg_and_genu_valgum.html
  2. NIH Genetic Testing Registry, “Genu varum”記事の参考資料https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gtr/conditions/C0544755/
  3. Coppa V, et al. “Coronal plane deformity around the knee in the skeletally immature population: A review of principles of evaluation and treatment.”(2022)記事の参考資料https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35633744/
  4. Bagwell JJ, et al. “Sagittal plane pelvis motion influences transverse plane motion of the femur: Kinematic coupling at the hip joint.”(2016)記事の参考資料https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26471322/
  5. Khamis S, Yizhar Z. “Effect of feet hyperpronation on pelvic alignment in a standing position.”(2007)記事の参考資料https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16621569/
  6. Preece SJ, et al. “The influence of foot hyperpronation on pelvic biomechanics during stance phase of the gait.”(2018)記事の参考資料https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29848172/
  7. Sabharwal S, et al. “Foot rotational effects on radiographic measures of lower limb alignment.”(2007)記事の参考資料https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17234068/
  8. “The relationship between pelvic tilt, frontal, and axial leg alignment in healthy subjects.”(2022)記事の参考資料https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36336637/
  9. Nguyen AD, et al. “Relationships between lower extremity alignment and the quadriceps angle.”(2009)記事の参考資料https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19423972/
  10. “Exercise Modalities for Improving Frontal Plane Knee and Foot Posture in Healthy Adults: A Systematic Review.”(2025)記事の参考資料https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39997983/
  11. Hospital for Special Surgery, “How to Correct Bowlegs in Adults”(2022)記事の参考資料https://www.hss.edu/health-library/conditions-and-treatments/correct-bowlegs-adults

個別研究やガイドラインは、本記事の観察法や独自理論を証明するものではありません。本文で明示した対象・条件・限界の範囲で参照しています。

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