ピラティス・軸

ピラティスの「頭頂を上へ伸ばす」合図で、姿勢のずれに気づいた

ピラティスで教わった、頭頂を天井へ伸ばす合図を使うと、骨盤が前へ流れた自分の立ち方(スウェイバック)が分かりました。鏡の前に横向きに立ち、いつもの姿勢と見比べるやり方を書いています。

ピラティスの先生から「頭頂で天井を押し上げるように、身体を上へ伸ばす」と教わりました。先生の言葉の中で、今もいちばん役に立っている一言です。

頭の上に荷物を載せて歩く人の姿を思い浮かべると、感覚をつかみやすいと思います。実際に重い物を載せたり、手で頭を押し込んだりするわけではありません。足元は床に残したまま、頭頂だけが上へ遠ざかっていく方向を、身体の内側でつくります。

私の場合、この上向きの方向ができると、胸を張る、顎を引く、骨盤を立てる、と部分ごとに直すのとは違う形で、全身がまとまり始めました。

この合図のおかげで、自分の立ち方がスウェイバック(骨盤が前へ流れ、その後ろに上半身を残して釣り合いを取る立ち方)になっていると分かりました。鏡の前ではまっすぐ立っているつもりだったのに、頭頂を上へ伸ばそうとすると、上向きの力が身体の中を通りませんでした。骨盤だけが前に残り、胸を反らさないと伸びられなかったのです。

頭頂から伸び上がる方向が見つかると、力を入れてへこませていないのに、お腹が自然に引き締まってまとまる感覚もありました。私はこの合図を、自分の身体のずれを見つけるための目安として使っています。

頭頂を上へ伸ばすときの向き

頭頂を上へ伸ばすといっても、顎を上げて天井を見たり、胸だけを持ち上げたり、腰を強く反ったりするわけではありません。下の図で、頭頂から骨盤まで背骨がどう積み重なっているかを確かめてください。

頭頂から骨盤まで続く脊柱の位置

頭の中では、頭頂と足裏がお互いに遠ざかっていく方向を思い浮かべます。

                 頭頂
                   ↑
            頭部・首が伸びる
                   ↑
         胸郭が骨盤の上へ集まる
                   ↑
           骨盤が足の上へ戻る
                   ↑
                 足裏

このときの身体は、力を抜ききった状態とも、全身を硬く固めた状態とも違います。床を受ける足と、上へ伸びる頭頂の間で、身体を縦に長くする力を使います。

私には、頭頂で天井を押すくらいのはっきりした意識が必要でした。軽く「背筋を伸ばそう」と思うだけでは、いつもの立ち方がほとんど変わらなかったからです。

スウェイバックの立ち方で起きていたこと

私が普通だと思っていた立ち方では、骨盤が本来置きたい場所より前へ出ていました。その後ろに胸郭を残し、さらに頭を前へ出して、倒れないように釣り合いを取っていたのです。

頭頂を上へ伸ばそうとすると、この前後のずれがはっきり出ました。

いつものスウェイバック頭頂へ上向きの方向が通る位置
骨盤が足より前へ流れる骨盤が足の上へ近づく
胸郭が骨盤の後ろへ残る胸郭が骨盤の上へ集まる
顎や頭部で釣り合いを取る頭頂が上へ伸び、首が長く感じられる
腰や腿の一部で支える足裏から頭頂まで力が分散する

頭頂を上へ向けたときに、身体が後ろへ倒れそうになったり、骨盤だけが前に残ったり、胸を反らさないと伸びられなかったりするなら、普段の立ち方では身体の各部分が上下に積み重なっていないのかもしれません。

写真一枚でスウェイバックかどうかを決められるわけではありません。私はこのやり方で、いつもの重心と、上へ伸びやすい重心の違いを見つけました。

骨盤ごと前へ出る立ち方を鏡で確かめる手順は、『私が、自分の骨格のねじれを修正した方法』(PDF)の第5章「骨盤の前傾・後傾だけでは分からない」にまとめています。

お腹が自然にまとまる感覚

下の図で、骨盤と股関節が上半身をどう支えているかを見てください。

骨盤・股関節と上半身を支える位置関係

頭頂へ伸び上がったときのお腹の感じは、腹筋を固めてお腹を押しつぶすときとは違いました。骨盤の上へ胸郭が戻り、身体を縦に長く保とうとすると、その間にあるお腹が内側へ集まって、体幹を支え始めるような感じです。

最初は、これを「お腹に負圧がかかる」ように感じていました。負圧は私の感覚を表した言葉で、頭頂を伸ばすと実際に腹腔内が負圧になるかを確かめたわけではありません。

ピラティスの呼吸法を使って体幹の運動をしたときや、呼吸法を2週間練習したあとに、腹横筋や内腹斜筋など深層の腹筋(お腹の奥にある、姿勢を支える筋肉)の活動が増えたという研究があります。どちらも女性19人、28人を対象にした小規模な研究で、頭頂を伸ばす合図だけを調べたものではありません。

練習では理屈を先に決めずに、まず、力任せにへこませなくても、上へ伸びるだけでお腹がまとまるかを見ます。呼吸を止めずにそのまとまりを保てるか、腰だけを反らさずに足裏から頭頂まで長さを感じられるかも確かめます。

大きな鏡で、いつもの姿勢と見比べる

この感覚を確かめるときも、大きな姿見を使います。正面からでは骨盤が前へ流れているか分かりにくいので、まず横向きで全身を見ます。

  • 何も直そうとせず、いつもの立ち方で横向きに立つ。
  • 足の位置を変えず、頭頂で天井を押し上げるように伸びる。
  • 顎を上げない。胸だけを張らない。骨盤を無理に巻き込まない。
  • 息を吐きながら、骨盤・胸郭・頭部が縦へ集まる場所を探す。
  • 一度やめて、いつもの姿勢と、上へ伸びた姿勢を見比べる。
いつもの立位
    ↓
頭頂だけに上向きの方向を与える
    ↓
骨盤・胸郭・頭部の前後差が見える
    ↓
呼吸できる範囲で縦へ集める
    ↓
力を抜き、もう一度いつもの立位と比べる

一回で理想の姿勢を完成させる必要はありません。最初は、上へ伸びようとしたときにどこが動かず、どこが代わりに反るかを見つけられれば十分です。

痛み、しびれ、めまい、息苦しさが出たら、そこでやめてください。頭や首に外から重さをかけることはせず、自分でいつでも止められる程度の力で上へ伸びます。

動いたあとに戻る場所

姿勢は一日中同じ形のままではありません。歩けば重心が移り、振り向けば胸郭と骨盤が回り、座れば股関節の角度が変わります。

頭頂を上へ伸ばす合図は、身体が前後へずれたあとに、もう一度、上へ力が通る場所へ戻るときに役立ちます。戻れたかどうかは、骨盤が前へ流れていないか、胸郭が骨盤の後ろに残っていないかで確かめます。そのうえで、顎や頭だけで姿勢を作ったり、腰の一か所だけを反ったりしていないか、呼吸をしながらお腹が自然にまとまっているかを見ます。

ピラティスと姿勢についての13の研究、合わせて783人分をまとめたレビューでは、改善を報告した研究がある一方で、対象や期間、測り方が研究ごとにばらばらでした。誰にでも同じ効果があるとは、まだ言えません。それでも私にとっては、頭頂から上へ伸びる感覚が、長年正しいと思っていた重心を疑うときの分かりやすい目安になっています。

鏡の前で試すこと

  • 足の位置を変えずに、頭頂を天井へ伸ばす。
  • 顎を上げず、胸だけを張らない。
  • 呼吸を止めずに、お腹が自然にまとまるかを感じる。

試したあとは、いつもの立ち方に戻して、骨盤、胸郭、首、お腹の感じがどう違うかを見比べてください。

参照

参考URLと参照範囲

  1. González-Gálvez N, et al. “Effects of Pilates Exercise on Postural Alignment: A Systematic Review.”(2024)ピラティスと姿勢アライメントに関する13研究・783人の体系的レビュー。研究間の異質性と追加研究の必要性を含むhttps://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11447755/
  2. Santos C, et al. “Effectiveness of the Pilates method on posture.”(2024)年齢群によりエビデンス確実性が異なる姿勢研究のメタ解析https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39562728/
  3. Barbosa AWC, et al. “The Pilates breathing technique increases the electromyographic amplitude level of the deep abdominal muscles in untrained people.”(2015)未経験女性19人を対象とした、体幹運動中の腹筋活動に関する小規模研究https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25603743/
  4. Kim ST, Lee JH. “The effects of Pilates breathing trainings on trunk muscle activation in healthy female subjects: a prospective study.”(2017)健康な女性28人を対象とした2週間の呼吸トレーニング研究https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5332969/
  5. Lee JH, et al. “Effect of Cervical Stabilization Exercise…”(2020)頭頂から引き上げるイメージを使った軸方向伸長の実践例。ピラティス固有の効果を示す研究ではないhttps://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7432242/
  6. Park H, et al. “Influence of posture and breathing pattern on abdominal muscle activity and intra-abdominal pressure.”(2023)健康な若年男性14人を対象に、姿勢と呼吸が腹筋活動・腹腔内圧へ与える影響を調べた研究https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10344968/

個別研究やガイドラインは、本記事の観察法や独自理論を証明するものではありません。本文で明示した対象・条件・限界の範囲で参照しています。

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