観察 01

骨盤の前傾・後傾と、骨盤ごと前へ出るスウェイバック

長いあいだ骨盤の傾きばかり気にしていましたが、私の骨盤は、脚より前へまるごと出ていました。鏡の前に横向きに立って、骨盤の前後の位置と、無意識に戻ってしまう場所を確かめるやり方を書いています。

鏡の前で腰を少しだけ後ろへ引いてみると、「ここは後ろすぎる」「これでは倒れそうだ」と感じて、つい元の位置へ戻してしまいます。私は何年も、その場所から動けませんでした。

姿勢について調べたことがある人なら、骨盤の前傾・後傾という言葉は一度は聞いていると思います。私もそこから入りました。ただ、私の身体で起きていたことは、この二つの言葉では説明しきれませんでした。

下の図は、骨盤と、脚の付け根の関節(股関節)、太ももの骨(大腿骨)を横から見たものです。骨盤の下に、太ももの骨の丸い頭がはまり込んでいる場所があります。この記事で「脚の真上」と書くときは、この場所を基準にしています。

骨盤・股関節・大腿骨頭の位置

私は長いあいだ、骨盤の問題は「前へ傾いているか、後ろへ傾いているか」という回転の問題だと思っていました。鏡を見ながら何年も試して、ようやく、傾きのほかに、骨盤の位置そのものがずれていたと分かりました。

いわゆるスウェイバックで、骨盤が脚の真上より前へ出て、その後ろで上半身だけが釣り合いを取っている立ち方です。私の場合も、脚の上から骨盤がまるごと前へずれていました。

その位置で長く暮らしていたので、私はそれを普通の立ち方だと感じていました。むしろ、それがまっすぐで正しい姿勢だと思い込んでいました。

下の図は、骨盤の傾きと、骨盤そのものの前後の位置を分けて描いたものです。骨盤の角度が同じでも、脚の真上に載っているかどうかで立ち方が変わるところを見比べてください。

骨盤の傾きと、骨盤全体の前後位置は別の問題

「傾き」と「位置」を分けて考える

骨盤の前傾・後傾は、横から見た骨盤の角度、言いかえると回転の話です。私が見落としていたのは、骨盤全体が空間のどこにあるかという、位置の話でした。

骨盤の前傾・後傾
= 骨盤の角度、回転

骨盤の前方・後方移動
= 骨盤全体が空間のどこにあるか

角度だけを変えても、骨盤そのものが脚より前へ出たままなら、身体全体の重なり方は変わりません。

見た目だけなら、腰を反らしたり、お腹を引っ込めたりすれば調整できます。けれども、それでは重心の位置はそのまま残ります。ここでいう重心は、どこに体重を預けると安定すると感じるか、という内側の感覚のことです。

ずれた重心を、普通の位置だと思っていた

骨盤が前へ出た立ち方を続けていると、その位置が自分にとっての中立になります。はじめに書いた「ここは後ろすぎる」という感覚が、まさにそうでした。鏡の前を離れると、私はいつも同じ場所へ戻っていたのです。

今振り返ると、姿勢の形と一緒に、どこへ体重をかければ真ん中なのかという自分の感覚もずれていました。

私の場合は、腰と骨盤を今までより後ろへ持ってくる必要がありました。その位置を鏡で確かめ、違和感があっても少しずつそこで立つ、というところまで分かるのに、何年もかかりました。

その位置で立ってみて初めて、「これまでよりまともな姿勢が見えてきた」と感じました。

骨盤を後ろへ戻すと、上半身と脚も変わる

ここでいう「骨盤を後ろへ戻す」は、腰を強く反らすことでも、お尻を後ろへ突き出すことでもありません。

骨盤の位置が変われば、その上にある背骨、肋骨のかご(胸郭)、肩甲骨、首、頭も、新しい位置で釣り合う必要があります。脚のほうでも、股関節、膝、足首、足裏へかかる重さが変わります。

骨盤だけを無理に動かして上半身を元のままにしておくと、別の場所に力みが出ます。全身が新しい位置関係に慣れていかないと、立ち方そのものは変わらないと思います。

下の図で、骨盤から上へ続く背骨・胸郭・頭と、下へ続く股関節・膝・足裏を、両方向にたどってみてください。骨盤が動くと、上も下も一緒に動いています。

骨盤の位置と、胸郭・背骨・脚の連鎖

O脚のように見えていた脚の変化

私には、脚がO脚のように見えるという悩みもありました。以前は膝や脚をまっすぐにしようとしていましたが、脚の向きだけを直そうとしても、根本から変わる感じはありませんでした。

研究所では、骨盤の位置、背骨のねじれ、胸郭の向き、股関節の使い方、膝と足先の方向、足裏の荷重が、互いに影響し合いながら一つの立ち方を作っていると考えています。

私の場合、背中やほかの骨格の動きが変わっていくにつれて、脚も以前よりまっすぐに近づいて見えるようになりました。医療的に測った結果ではなく、私自身が鏡と動作の中で感じた変化です。このことがあってから、一か所だけを見ていても身体は変わらないと考えるようになりました。

骨盤と一緒に見る場所

骨盤が前傾しているから後傾させる、膝が外へ向いているから内へ入れる、という一対一の直し方は分かりやすいのですが、身体全体のつながりを見落としやすくなります。

骨格ねじれ研究所では、姿勢を次のような組み合わせで観察します。

観察する場所一緒に見る場所
骨盤の角度骨盤全体の前後位置
骨盤の位置胸郭と頭の位置
股関節の向き膝と足先の方向
膝の間隔足裏の荷重と骨盤の左右差
背骨の回転肩甲骨と骨盤の向き

こうして組み合わせで見ていくと、直す場所は一か所に決まらなくなります。複数の骨と関節の位置を一つずつ動かしながら、全身でもう一度つなぎ直していくことになります。

鏡で、自分が戻りたがる位置を知る

ここでも、最初に用意するのは全身が映る大きな鏡です。

鏡の前で横向きに立ち、骨盤が足に対してどこにあるかを見ます。次に、骨盤の角度は変えずに、骨盤全体を少し前へ、少し後ろへ移してみます。

すると、自分が「真ん中だ」と感じる場所と、外から見た身体の重なりが違っていることがあります。

一度で正しい形を作ろうとするより、自分が無意識にどこへ戻るかを先に知っておきます。これを何度も繰り返しながら、重心の感覚を少しずつ変えていきます。

骨盤の前後の位置から、全身を見直す

骨盤から順に全身を見ていくと、自分が正しいと思い込んでいた重心を疑えるようになります。研究所では、一か所を正しい角度へ押し込むことはせず、骨盤、背骨、胸郭、肩甲骨、首、脚が互いに動ける位置関係を作り直していきます。

今日、鏡の前でやることは小さくて構いません。

  • 横向きに立ち、骨盤が足の上のどこにあるかを見る。
  • 骨盤を少しだけ前後に動かし、「ここが真ん中だ」と感じる位置で止める。
  • その位置で鏡を見て、感覚と映っている重なりの違いを確かめる。

同じずれが肩甲骨や膝にどう出るかは、次の記事以降に書いています。

『私が、自分の骨格のねじれを修正した方法』(PDF)では、この記事を第5章に入れ、次の肩甲骨の章と続けて読めるようにしています。

参照

参考URLと参照範囲

  1. Sagittal spinal alignment in a Japanese population(PMC)記事の参考資料https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4206809/
  2. PubMed 31088256記事の参考資料https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31088256/
  3. Reliability and validity considerations for standing lower-limb alignment from photographs(PMC)記事の参考資料https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9924985/

個別研究やガイドラインは、本記事の観察法や独自理論を証明するものではありません。本文で明示した対象・条件・限界の範囲で参照しています。

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