見抜く・観察 04

ダンス動画で、振付の奥にある骨格の連動を見る

TWICE公式のダンスプラクティスで、SANAさんの足元から骨盤、胸郭、頭までの動きの受け渡しを追います。動画を五回に分けて見て、最後に鏡で自分の動かない区間を探します。

ダンス動画を再生すると、たいていは手と足に目が行きます。腕をどこへ出したか、足を何歩動かしたか、どこで首を振ったか。振付を覚えるなら、それで十分です。身体そのものを変えたい場合は、手足の奥にある骨格の動きを見ます。

全身の軸骨格と付属肢骨格の位置

骨格を見る時に確かめるのは、身体がどれくらい細かく分かれて動いているかと、分かれた動きがまた全身の一つの動きにまとまっているかです。

私がよい手本だと思っているのは、TWICEのSANAさんです。公式のダンスプラクティス(練習室で振付を通して撮った公式映像)を見ると、上体を後ろへ大きく動かす場面でも、腰の一か所で折れているようには見えません。支持脚(体重を受けている側の脚)、大腿骨(太ももの骨)、骨盤、背骨、胸郭(肋骨で囲まれた胸のかご)、頭まで、全身の位置を変えながら動いていて、すぐに次の方向へ移っていきます。

骨盤と左右股関節の位置

研究所では、こういう身体を「骨格がよく整っている」と呼んでいます。まっすぐ一本の線に固まっている、という意味で使っているわけではありません。前後左右に大きく動いても部位どうしの関係が崩れず、別の位置へ移って、また戻ってこられる身体のことです。

上手い人の全身を手本にする理由

自分の身体だけを鏡で見続けていると、今の自分がとれる姿勢を「普通」だと思ってしまいます。骨盤が前に出ていてもそこが真ん中だと感じますし、胸郭が片側に回っていても、正面を向いているつもりでいます。

そこで、上手い人の動きを見本にします。見る時は、次のようなところを確かめます。

  • 一つの部位だけを大きく動かしていないか。
  • 胸郭と骨盤を、一緒に動かす時と別々に動かす時で使い分けられているか。
  • 片脚に体重を乗せたまま、上半身を別の方向へ動かせているか。
  • 大きく反ったあと、勢いで倒れずに元の位置へ戻れているか。
  • 右にも左にも、同じくらい自由に動けているか。

上手い人の動きを見ていると、自分で「動かない」と思い込んでいる場所にも、本当はもっといろいろな動き方があるのだと分かってきます。

SANAさんのダンスプラクティスで見るところ

TWICE公式の「Feel Special」と「MORE & MORE」のダンスプラクティスは、全身と床が一緒に映っていて、何人かを同じ画角で比べられます。ミュージックビデオは衣装やカメラワーク、細かい編集が中心なので、身体の動きのつながりを追うなら、練習動画のほうが見やすいです。

SANAさんを見る時は、顔や手先は追わずに、下の表の五か所を、足元から頭まで縦につながったものとして見ます。

見る場所観察すること
支持足床のどこへ体重を預け、いつ反対脚へ渡すか
大腿骨・股関節脚が骨盤の下で回り、前後左右の動きを受け止めているか
骨盤前後移動、傾き、回旋を一つに固定せず使い分けているか
背骨・胸郭一か所で折れず、複数の区間を通して上体の向きを変えているか
頭部胸郭の動きにつぶされず、次の方向を選び続けているか
SANAさんの動きを、足元から頭部までの連鎖として見る

背中が後ろへ大きく揺れて見える場面があります。そこを「腰が柔らかい」とだけ見てしまうと、ほかの部分の動きを見落とします。後ろへ行く上体を骨盤と股関節がどの位置で支えているか、胸郭が骨盤に対してどちらを向いているか、そこから支持脚をどう替えて次の動きへ移っているか。見るのは、こうした全身の受け渡しです。

大きく反れる時、背骨以外で起きていること

上体を後ろへ反らす動きは、背骨だけで作っているように見えます。けれど背骨の下には骨盤があり、その下に左右の大腿骨と足があります。下半身の位置が変わらないと、上半身だけを大きく動かす余地はあまり生まれません。

床を支持足で受ける
        ↓
大腿骨と骨盤の位置関係が変わる
        ↓
骨盤の上で背骨と胸郭が方向を変える
        ↓
頭部が次の方向を保つ
        ↓
全身を別の位置へ移し、次の動作へ戻る

研究所で「背骨が柔らかい」と言う時は、椎骨(背骨を作る一つひとつの骨)そのものが柔らかいことを指してはいません。隣り合う骨どうしが関節のところで少しずつ動き、その小さな動きを骨盤や股関節の動きとつなげられることを指しています。

ダンサーとダンサーでない人を比べた研究では、腰椎と骨盤まわりの運動の制御や動的な安定性、背骨の一部の区間の可動域に差があったと報告されています。長くダンスの訓練を続けると、身体の多くの部位を使って全身のバランスをとる能力が高まる可能性を示した研究もあります。どちらも記事の最後に載せた文献に入っています。ただ、こうした集団を対象にした研究から、SANAさん個人の骨や関節の状態が分かるわけではありません。動画で見たいのは、一つの動きを全身に分けて受け持てる身体が、実際にどう動いているかです。

止めた画面と、動いている映像の違い

ダンス動画を一時停止すると、身体が大きく傾いて背中が反り、骨盤がずれている瞬間が映ります。その一枚だけなら「姿勢が崩れている」と言えなくもありません。けれどダンスで問題になるのは、その崩れが次の動きへつながっているかどうかです。

一枚の写真で見えるもの動画でなければ見えないもの
その瞬間の身体の輪郭どの部位から動き始めたか
頭、肩、骨盤の位置動きがどの順番で伝わったか
片脚へ乗った形反対脚へ体重を渡せるか
背中を反った角度その位置から制御して戻れるか
左右非対称のポーズ反対方向も選べるか

2D動画でも、身体の表面の動きを見る資料としては使えます。体幹と骨盤の動きを2D動画でどこまで見られるかを調べた研究も、記事の最後に載せた文献に入れています。ただ、カメラの角度や遠近の影響を受けるので、骨の立体的な位置を測れるわけではありません。映像から分かるのは部位どうしがどう動いて見えるかまでで、「骨が何度ねじれている」といったことは判断できません。見るのは、その形を通り過ぎて、また戻ってこられるかどうかです。

「ウェーブ体形」と、ボディウェーブができるかどうか

体形をウェーブ、ストレートなどの型に分ける見方があります。見た目で分ける型と、身体を部分ごとに分けて動かせるかどうかは、別に考えたほうがいいと思っています。

  • ウェーブに分類される人でも、胸郭と骨盤が一緒にしか動かなければ、ボディウェーブ(身体を下から上へ波のように順番に通す動き)はうまく通りません。
  • ストレートに分類される人でも、背骨や股関節を細かく使えれば、大きくしなることができます。
  • 外から見て同じ体形でも、右へ動きやすい人と左へ動きやすい人では、動き方が変わります。
  • 骨盤が前に流れたまま固まっていると、背骨を後ろへ動かせる範囲も狭くなりやすいです。
  • 胸郭と骨盤の間に回旋差(ねじれの向きのずれ)が残っていると、形だけ真似しても一か所に負担が集まりやすくなります。

研究所で先に確かめるのは、生まれつきの型より、今どこが動いていて、どこが一塊になっていて、どの方向へ動けなくなっているかです。

研究所で「生まれ持った正しい姿勢を取り戻す」と言う時も、全員を同じ形にそろえるつもりはありません。ねじれて一方向に固まった状態から、その人の骨格がもともと持っている前後・左右・回旋の動きを取り戻したい、という意味で使っています。

ダンス動画を五回に分けて見る

一度の再生で全部を見ようとすると、手先や表情、フォーメーション(並び方の移り変わり)に目を取られます。そこで、固定カメラのダンスプラクティスを、見るところを変えて五回再生します。

  • 一回目は全身の流れを見ます。 目立つ人より、動きが途切れずに次へ続いている人を見ます。
  • 二回目は足元だけを見ます。 どちらの足で床を受け、いつ反対の足へ体重を渡すかを追います。
  • 三回目は骨盤と胸郭だけを見ます。 二つが一緒に動く瞬間と、別々の方向へ動く瞬間を見分けます。
  • 四回目は背中と頭部を見ます。 上体を反らす、丸める、回す動きの中で、顎や首だけに力が入っていないかを見ます。
  • 五回目は自分を鏡に映します。 同じ動きを小さくやってみて、動画で見たつながりと、自分の身体が代わりにしている動きを比べます。
ダンスプラクティスを五回に分けて観察する

2026年に公表されたダンスの観察学習の研究では、熟練者は初心者に比べて、肩、骨盤、太もも、膝など動きに関係する場所へ効率よく視線を向ける傾向があったと報告されています。上手い人は、動画のどこを見るかを選んでいるようです。

再生速度を落とす時も、いきなり一コマずつ止めることはしません。まず普通の速さで流れを見て、そのあと0.75倍や0.5倍で、どの部位からどの部位へ動きが伝わるかを見ます。遅くしても、動きが移り変わっていく様子が分かる速さにとどめます。

自分と比べる時に見るところ

SANAさんと同じ角度まで反らそうとすると、腰や首だけで距離をかせぎたくなります。なので、一番反った時の角度は比べません。代わりに、下の表のようなところを自分の身体で確かめます。

動画を見た後の確認自分の身体で探すもの
上体を後ろへ送る胸郭が動かず、腰だけが反っていないか
骨盤を横へ送る肩と頭まで同じ方向へ倒れていないか
片脚へ乗る反対側の骨盤が固まり、膝だけが曲がっていないか
胸郭を回す骨盤まで全部ついてきていないか
元の位置へ戻る勢いに任せず、自分で止まれるか

上手い人の大きな動きは、自分の身体のどの区間が動いていなくて、どこが代わりに動いているかを見つけるのに役立ちます。

大きな姿見の前で小さく真似してみると、動画では背骨全体を通っていた動きが、自分だと腰の一か所で止まっていることがあります。そこが、次に分けて動かす場所になります。

ダンス動画で見たことを、自分の姿勢に使う

ダンス動画は、振付を覚える以外にも使えます。身体がどこまで分かれて動き、それがまたどうつながるかを見る、骨格の教材にもなります。

使うのは、TWICE公式のダンスプラクティスのように全身が映る固定カメラの動画です。足元から頭までの受け渡しと、形に入って、通り過ぎて、戻るまでを見て、自分の動かない区間は鏡で探します。

SANAさんを手本にしているのは、同じ身体になりたいからではありません。大きく動いているのに一か所で折れず、全身に動きを渡しているように見えるからです。

姿勢を見る時も、まっすぐな線を探すより、身体の各部位が必要な方向へ動き、ほかの部位へ動きを渡して、また戻れるかを見ます。ダンス動画をそういう目で見られるようになると、踊らない人でも、自分の身体の見方が変わってきます。

動画を一つ選んで試す手順

  • 好きなダンス動画を一つ選び、まず普通の速さで全身の流れだけを追います。
  • 次に骨盤と胸郭だけを見て、二つが同じ方向へ動く瞬間と、別々に動く瞬間を分けて見ます。
  • 最後にその動きを自分の身体で小さくやってみて、鏡でどこが動いていないかを確かめます。

動画で見つけた「動ける区間」と「動けない区間」の違いが、自分の骨格を分けて動かす練習の出発点になります。背中を区間に分けて動かす練習は、別の記事で、鏡を使ったセルフチェックとして書いています。

参照

参考URLと参照範囲

  1. TWICE公式「Feel Special」Dance Practice Video(2019)記事の参考資料https://www.youtube.com/watch?v=MPD36TJJFmY
  2. TWICE公式「MORE & MORE」Dance Practice Video(2020)記事の参考資料https://www.youtube.com/watch?v=xiMNWJr8J1w
  3. Paris-Alemany A, et al. “Comparison of lumbopelvic and dynamic stability between dancers and non-dancers.”(2018)記事の参考資料https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29982036/
  4. Swain CTV, et al. “Multi-segment spine kinematics: Relationship with dance training and low back pain.”(2019)記事の参考資料https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30551053/
  5. “Dance training improves the CNS's ability to utilize the redundant degrees of freedom of the whole body.”(2021)記事の参考資料https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33335153/
  6. Jarvis DN, et al. “Trunk coordination in dancers and nondancers.”(2014)記事の参考資料https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24979816/
  7. Nam SM, et al. “From Gaze to Movement: Observational Learning in Dance.”(2026)記事の参考資料https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41657257/
  8. “Utility of 2D Video Analysis for Assessing Frontal Plane Trunk and Pelvis Motion during Stepping, Landing, and Change in Direction Tasks: A Validity Study.”(2022)記事の参考資料https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35136682/

個別研究やガイドラインは、本記事の観察法や独自理論を証明するものではありません。本文で明示した対象・条件・限界の範囲で参照しています。

このサイトの記事は、ミトン先生の体験と研究所の考えを記録したものです。方針の全文はサイトの方針をご覧ください。